
普通のプラスドライバーでは、取り外す事ができない、少しだけやっかいなネジです。
輸入車には、かなり広く採用されているので、
『ヨーロッパ車に乗っている』+『自分で多少でも車をいじる』
という方は絶対に出会っているはずです。
ちなみに、トルクスという名称は、テキストロン・カムカー社が開発したネジの規格で、『TORX®』というマークには、Rマークが付きます。つまり登録商標になってしまっているのです。
なので、他の会社の製品は、「トルクス」と名乗ることができずに、「ヘクサロビュラ」「ヘックスローブ」なんていう呼び方をします。
トルクスって呼び名を知らなくても、何となく聞いた事があるなと思ったあなたは、結構なネジ通です。
トルクス・ヘクサロビュラ・ヘックスローブの特徴
まっ、色んな呼び方はありますが、基本的に穴の形状は、同じです。

トルクスネジ_皿頭

トルクスネジ_トラス頭
トルクス・ヘクサロビュラ・ヘックスローブの、最大の特徴は、その穴です。
ネジの用語だと、リセスと呼ばれる部分です。プロ風に言うと、トルクスネジは、リセスが星形なのです。
・・・個人的には、角が5本ではなく、6本なので、星よりもヒトデに近いなとか思ったりしますけど。と思って、ヒトデ検索したらヒトデも、ほとんど5本脚でした・・・。
でっ、星形だと何が良いかというと、
十字穴のリセスよりも、星形のリセスの方が、効率よく、ネジにトルクが伝えられるという事なんです。
トルクスネジは、ドライバーも星形です。そのため、穴とドライバーの接する部分が多くなります。
ツノの部分の数を考えると、十字穴が4ヵ所なのに対し、トルクスは6ヵ所もあります。
つまり、ドライバーが6ヵ所のツノを引っかけて回す状態になりますので、十字穴よりも伝達できるのです。

十字穴は4点に力がかかる

トルクスは6点に力がかかる
トルク伝達能力が高いと、まず、リセス部分を潰してしまう事が少なくなります。さらに、しっかりと締結する事ができます。
もっと加えると、十字穴は押し付ける方向に力を加えずに回転させるとリセスから、抜ける方向に力が作用します。
これをカムアウトというのですが、トルクスの場合は、カムアウトが起きにくいなんて特徴もあるのです。
力がうまく、ネジに伝わらずに、カムアウトなんか起きてしまうと、車の組み立て時点で、ネジが規定のトルクで締まらない上に、最悪の場合、すっぽ抜けたドライバーの先端で組み立てているモノを傷付けてしまう事にもなります。
なので、組み立て工場では、トルクスが重宝されるのです。
トルクス・ヘクサロビュラ・ヘックスローブ用の工具
トルクスを、締める&外すには、専用の工具が必要です。
以前は、かなり大きなホームセンターや、自動車工具専門店でしか手に入りませんでしたが、最近は、大体のホームセンターやカー用品店でも販売しています。
自分は、狭い場所用のL型タイプと普通のドライバータイプを常備しています。どちらも大体1,500円程度かと思います。
ネジの太さによって、星形のサイズも違うのですが、大体の太さのネジに使用できるように、先端ビットが交換できるようなセットになっています。あと、プラスして電動工具用の先端ビットもありますね。工具としては、こんな感じです。
ビット先端を拡大したのがこちら。良く見ると、ビット部分の先端に穴が開いているのは、同じトルクスでも、別のパターンが存在するからです。それは、あとの方で説明します。
工具の使い方としては、普通のドライバーと同じです。内装や、エンジンルーム内は狭い部分にネジが留まっている事が多いので、L型タイプがオススメです。
トルクスネジとドライバー適合表
ネジのサイズと種類によって、使用するドライバーの大きさが違うのでまとめておきます。
ミリネジ
サイズ | 皿ボルト | ボタンボルト | 穴付ボルト |
---|---|---|---|
T6 | M2 | M2 | |
T7 | |||
T8 | M2.5 | M2.5 | |
T9 | |||
T10 | M3 | M3 | M3 |
T15 | |||
T20 | M4 | M4 | |
T25 | M5 | M5 | M4 |
T27 | M5 | ||
T30 | M6 | M6 | M6 |
T40 | M8 | M8 | |
T45 | M8 | ||
T50 | M10 | M10 | M10 |
T55 | M12 | M12 | M12 |
T60 | M16 | M16 | M14 |
インチネジ
サイズ | 皿ボルト | ボタンボルト | 穴付ボルト |
---|---|---|---|
T6 | |||
T7 | #4 | ||
T8 | |||
T9 | #4 | ||
T10 | #5 | #6 | #4・#5 |
T15 | #6 | #8 | #6 |
T20 | #8 | ||
T25 | #10 | #10 | #8 |
T27 | 1/4 | #10 | |
T30 | 1/4 | 1/4 | |
T40 | 5/16 | 5/16 | |
T45 | 3/8 | 3/8 | 5/16 |
T50 | 1/2 | 3/8 | |
T55 | 5/8 | 1/2 | 1/2 |
T60 | 3/4 | 5/8 |
すこし違ったトルクスネジ
先ほど出てきた、工具のビットの先端に穴があいていましたね。
それは、このネジを回すためです。このネジのメーカーさんも、正式にはトルクスとは呼称できないので、TRXとか呼んでいます。
俗称では、真ん中にピンがあるので、ピントルクスなんて呼び方もします。
でっ、ピントルクスの目的はというと、いたずら防止です。ピンがあることで普通のトルクスドライバーでは、取り外しができない!というのが最大の目的です。
おっ。でも良く考えてください。工具には、すでに穴が開いています。つまり、ピントルクスも回せます。ピントルクス対応済みなのです。よって、ピントルクスの、いたずら防止という使命は、これにて終了してしまったのです。
ただ、十字穴用のドライバーと比較して、トルクスのドライバー自体を持っている人も少ないと思いますので、簡易的ないたずら防止としては、使えるかと思います。
トルクスネジのまとめ
ということで、トルクスネジについて書いてみました。若かりし頃は、工具も持っていなかったので、なんとかして他の工具で代用できないかと考えたものです。
ただね、しっかりと留まっているのですよ、トルクスだけに。なので、数本のネジを緩めるために、工具を買うはめになるのです。
なかなか、やっかいなネジではありますが、組み立て工場としては、結構なメリットがあるのです。
なので、今後も十字穴のネジからトルクスに移行していくのは確実かと思います。国産車でも、そのような動きになっているので、ドライバーくらいはもっていても良いかと思います。
あとね、見た目がカッコいいので、普通のネジから、トルクスのネジに交換したい!と思うこともあるかと思います。内装とかならいいですが、安全上重要なパーツには、結構危険な行為です。ネジは同じに見えても、それぞれ強度が違いますから!
そんな事に関して、詳しく書いた記事もリンクしておきますので、興味がありましたら読んであげてください。
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では、今回もこれにて、おわり!
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