ボルトを締結する時に使用する座金。みなさん何のために使ってますか?
答えとしては、
「もちろん、緩み止めのためだよ。」と言われる方がほとんどだと思います。
ですが、座金って、バネ座金も含めて、本当に効果があるものなのでしょうか?
効果があれば、緩み止めナットなんか、いらないんじゃないかと疑問に思うわけです。
そこで、当サイトで、座金の効果について検証してみました。
座金の役割
座金は写真にある通り、丸い輪です。平座金とかワッシャーとも呼ばれます。
見た目では、ただの金属の板なので、緩み止め効果があるとは思えません。
ではなぜ、取り付けるのでしょうか。
実は、座金の主な役割は、座面の陥没を防ぐ事なのです。
座面とは、ボルトの頭の締結物に接する部分です。
これが、締結物に沈みこんでいかないようにするため、より広い面積で締結物に力をかける必要があります。
上図右側のように、座金を取り付けられたボルトは、実質的な座面積が広がっていることが分かります。
座面積が広くなれば、それだけ荷重が分散され、陥没を抑制する効果が発揮されるのです。
-少し難しいので、簡単な例えばなしをします。-
雪国で、雪の上を歩く時に使う、かんじき。これは、柔らかい雪の上でも、沈み込まないように、雪に接する面積を広げ荷重を分散する効果があります。
座金は、座面の面積を広げ締結物が陥没するのを防ぐので同じ原理となります。
集中的に荷重が加われば、硬い金属であっても、小さな単位で陥没していってしまいます。
特に、樹脂や、銅やアルミなど金属の中でも柔らかいものは、目に見えて圧力が加わっているのが分かります。
ボルトは、適正トルクで締め付ける事、つまりナットとボルトの座面で締結物をガッチリ挟み込む事で、締結力を発揮します。
座面の陥没は、ガッチリ挟み込んでいる間に隙間を作る事になり、締結力の低下を招きます。
締結力(軸力)の低下したボルトは、すでに緩んでいる状況となるのです。
つまり、座金の緩み止め効果としては、
座面の陥没に起因する、軸力の低下を防ぎ、結果的には、緩みを防ぐ効果があると言えるようです。
座金の規格
サイズとしては、内径・外径・厚さで表記されます。同じ内径であっても、外径や厚さの種類が色々とあります。
締結物が柔らかい・あいている穴径が大きい場合など陥没の可能性が高いものには、外径の大きな座金を選ぶと、荷重分散効果が大きくなり効果的です。
バネ座金の役割
バネ座金は、写真の通り、バネの一部を切り取ったような形状をしています。
バネザとか、スプリングワッシャーとも呼ばれています。
見るからに、バネ性があり、緩み止め効果が期待できそうですが、実際はどうでしょうか。
バネ座金が緩みを抑制する根拠は、バネ性であると言えます。
ボルトの座面と締結物の間に、バネを入れておけば、締結物をガッチリと押し付け、締結する力を保持して緩みにくいというものです。確かに、理論上は、緩みにくそうに感じます。
ただし、ここには、多くの議論があります。
自分の見解を話すと、バネ座金の緩み止め効果はないものと思っています。
なぜなら、バネ座金のバネの力が弱すぎると思うからです。
たとえば、ボルトが適正な軸力(締結物を締め付ける力だと思ってください)を発揮するように、適正トルクで締め付けたとします。
すると、締結物を締め付ける力が発生します。
もし、バネ座金が効果を発揮するのであれば、締め付け力に拮抗するようなバネ性が無ければなりません。
しかし、バネ座金のバネ性は、締め付け力よりも圧倒的に弱いもの(JISでは規定されていません)なのです。
実際に、ボルトを締めながら、バネ座金の様子を見ていれば分かりますが、締め付けの早い段階で、全圧縮状態になっているのが分かります。
逆を返せば、だいぶ緩んだ時点でバネ性が発揮されてくるわけです。
この程度のバネの力では、締結物をガッチリと押し付けるには、役不足であると言わざるを得ません。
効果があるとすれば、最終的に緩んだ状態の脱落防止程度じゃないでしょうか。
これは、あくまで自論ですが、多くの研究結果からも、バネ座金が緩み止めに効果が無い事が証明されてしまっています。
今まで、習慣的に使用してしまっていたバネ座金ですが、こんな結論に落ち着くわけです。
では、どうやってネジの緩みを止めればいいのか?
残念ながら、ネジの緩みを完全に止めるものはありません。ネジは緩める事ができる事に利点があるからです。
ただ、緩みにくくする事はできます。
たとえば、緩みにくいナットや、緩み防止の薬剤を使用する事です。
詳しくは、それぞれの解説記事があるので、そちらを見て下さい。
ともに、ホームセンターでも売っているものが多いので緩みが気になるネジには使用してみてはどうでしょうか?
まとめ
今まで、緩み止め効果があると思っていた、座金とバネ座金。
座金は、陥没防止に必要ながら、バネ座金にいたっては、ほぼ、効果がないという結論となりました。
良く考えてみれば、最近の車のネジには、バネ座金が付いていないように感じます。
これも、研究によって、効果が無い事が実証されたからでしょうか。
自動車メーカーからしたら、不要なパーツは、余計なコストと重量でしかありません。
今は、緩み止めに効果のあるボルトや、さらに強力な緩み止めナットなど、色んな緩み止め技術が出てきているので、今後も継続して調べていきたいと思います。
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