ネジの緩みに困ってませんか?
車やバイクなど、振動が多く発生するものは、振動でネジが緩みやすいので注意が必要なんです。緩まないネジはありませんからね。
なので、車やバイクにも、結構な数の緩み止め機能の付いたナットが、使用されているわけです。
さらに、それらのナットにも、色々な種類があって、緩み止め効果の強さ・耐熱温度・耐油性などで使い分けがされています。
一概に、緩み止めのナットと言っても、それぞれに特徴があるのです。
この記事では、緩み止めナットの特徴を知って、適材適所で使い分けられるようにしていきたいと思います。
ちなみに、座金・バネ座金は、ほとんど緩み止め効果は期待できません。
詳しくは、座金・バネ座金は何のために使う?という記事も見てみてください。
緩み止め機能付きナットを使う上での注意点
はじめに、緩み止めナットの使用上の注意点を書いておきます。それは、寿命があるという事です。
物なので、寿命があるのは当然ですが、緩み止めナットの場合は、繰り返し使用できる回数が決まっているのです。
もし、あなたが、バイクの一部を分解するためにナットを外したとします。再度、組み立てる時には、そのナットは、再利用しますよね。
普通のナットだったら、それで問題ありません。ただ、それが、緩み止め機能付きのナットなら注意が必要です。
そのナット、取り外すの何回目ですか?
緩み止め加工をされたナットの中には、再利用できなかったり、緩み止めの機能が低下したりするものがあるからです。
基本的に緩み止め機能のついたナットは、金属や樹脂をボルトのネジ部に押し当てる事で、ネジの戻りを抑制しています。
押し付けられた金属や樹脂は、1度使用してしまうと、変形してしまい、押し付ける機能が低下するのです。
再利用時は、大体のナットは、機能が低下していると思ってよいかと思います。もともとの機能が必要であれば、新しいナットと交換になります。
緩み止めナットの種類
ネジメーカーにとって、永遠のテーマである、ネジの緩み止め。各社、色んな商品をリリースしています。それぞれ、特徴があるので、見ていきたいと思います。
種類は、色々ありますが、取り外したナットを交換したい場合は、同じ種類のナットと交換することが良いと思います。
緩み止めナット
緩み止め能力:ネジ部に金属部品が食いつくので能力高め。
ホームセンターでは、緩み止めナットという名前で販売されていますが、
Uナット・SLナット・Vロックナットなど、色んな呼称があります。
良く見ると、少しずつ形状が違っていますが、機能的には同一だと思ってください。
ナットの内側に、金属板のリングが付いていて、この部分の出っ張りがネジ部に食いつく事で、緩みを抑制します。
このナットの良い点
- ネジ部に食いつくので、締め込んだ状態じゃなくても簡単に脱落しない。ネジの途中でも止まる。
- オール金属製なので、耐熱・耐寒性に優れている。
このナットのダメな点
- ネジ部に食いつくので、ボルトに結構なキズが付く。その傷から錆びる事も...。
- 締め付ける時に、チカラが必要。
- 繰り返し使用は、5回程度までかと。
ナイロンナット
緩み止め能力:緩み止め効果を発揮するのが樹脂部品なので。
ナットの内側に、ナイロンのリングがついていて、これがネジ部を押さえつける事で、摩擦を発生させ、緩みを抑制します。
日本のナイロンナットは、ナイロン部分が白ですが、ヨーロッパ系のものは、青が多いです。
このナットの良い点
- ナイロンは樹脂の中では、耐油・耐ガソリン・耐熱性に優れているので、安定した緩み止め効果がある。
- 樹脂の部品で摩擦を発生しているので、ボルトがキズつきにくい。
- ー40℃~120℃までの温度範囲で使用できる。
このナットのダメな点
- 耐性の高い樹脂ではあるが、樹脂相当の劣化がおきる。経年時に機能低下がある。
- 樹脂でネジ部に対する摩擦を向上させているだけなので、そこまで緩み止め効果が高くない。
- 繰り返し使用は、5回程度まで。
スリーロックナット(タフロックナット)
緩み止め能力:Uナットよりも若干劣る。
上の2点は、ナットにリングをはめ込む事で、緩み止め機能を付加していました。
対して、スリーロックナットは、ナットの一部に外側からチカラを加えて、内側のネジ部を潰す加工をしています。
この潰された部分が、ボルトのネジ部に食いつく事で緩みを抑制します。
このナットの良い点
- ネジ部に食いつくので、締め込んだ状態じゃなくても簡単に脱落しない。ネジの途中でも止まる。
- オール金属製なので、耐熱・耐寒性に優れている。
- 完全1パーツなので、施工性が良好。
このナットのダメな点
- ネジ部に食いつくので、ボルトに結構なキズが付く。(Uナットよりは、キズつきにくい。)
- 普通のナット(2種)よりも厚みがある。
- 繰り返し使用は、2~5回程度まで。
ハードロックナット
緩み止め能力:鉄道の線路にも使用される安定感
メインの用途は、鉄道関係なので、あまり車とかバイクで使用される事はないですが、一応書いておきます。
ハードロックナットは、2個のナットを組み合わせて使用するのが特徴です。芯がズレたナットを組み合わせる事で、偏芯して、ボルトに対して無理に固定されます。
この無理してる部分が、ボルトに食いつく事になります。これで、緩み抑制効果が発生します。
このナットの良い点
- 米国NAS(National Aerospace Standard)航空規格にも適合の高い緩み止め効果。
- オール金属製なので、耐熱・耐寒性に優れている。
- 摩耗が少ないので、他のナットより繰り返し使用に強い。
このナットのダメな点
- 1か所固定するのに、2パーツあるので、取付が面倒くさい。
- ナット自体が、大きく、重い。
- 価格が高い。
皿バネナット
緩み止め能力:ボルトに食いつくわけではないので
皿型のバネ座金を、ナットにカシメて一体化したナットです。ナットを締め込むと、皿バネ座金を潰すかたちになるので、ここでバネ作用が発生します。
相手材(取付部材)とナットの間で発生した、バネ作用によって摩擦力がアップします。また、自然緩みで発生するギャップを埋める事もできます。
このナットの良い点
- ワッシャー(座金)を使わなくて良い。
- オール金属製なので、耐熱・耐寒性に優れている。
- 取り付け部材にキズがつきにくい。
このナットのダメな点
- 緩み止め機能は、さほど期待できない。
- 緩み始めとともに、緩み止め効果が落ちてくる。
フランジナット
緩み止め能力:緩みだしたら、普通のナットと同じ
世間的には、一応、緩み止め機能付きナットの扱いですが、個人的には、緩み止め機能は、ほぼ無いと思っています。ただ、色んなところに使われているので、書いておきます。
フランジナットは、他のナットのように、ネジ部に食いつく事はありません。
取り付けるものに対して、接地面積が大きくなるので、相手材の陥没を防ぎます。ネジは、相手材を締め付けて、はじめて締結力が発揮されるので、陥没を防ぐ事は、重要です。その点においては、緩み止めという機能なのかもしれません。
フランジ部の裏面を見ると、セレートと呼ばれる、スジがあるものと無いものがあります。セレート付きは、相手材との滑り止めになるので、緩み抑制の効果があります。
このナットの良い点
- ワッシャー(座金)を使わなくて良い。
- 流通量が多く、入手性が良い。価格も安い。
- 普通のナットと同じくらいの繰り返し使用が可能。
このナットのダメな点
- 緩み止め機能は、ほぼ期待できない。
- 緩み始めると、緩み止めの効果は、機能しなくなる。普通のナットと変わらない。
ナット以外のネジの緩み止め
ネジの緩みを抑制する方法は、緩み止め機能が付いたナットを使う以外にもあります。
例えば、
- ノルトロックワッシャーなどの、緩み止め機能の付いたワッシャー(座金)を使う方法
- ネジの緩み止め剤を使用して、接着に近い方法で、緩みを抑制する方法
などです。
緩み止めの作用があるワッシャーで、昔からあるのが、スプリングワッシャー(バネ座金)ですが、文頭にも書いた通り、最近の研究では緩みに対して、ほぼ効果がないとされています。
対して、高い効果があるといわれているのが、ノルトロックワッシャーなどの、ナットの回転を抑制するというものです。
やや角度の付いたワッシャーが、2枚セットになっていて、座金表面にギザギザが付いています。ナットを締め込むことで、ギザギザが嚙み合ってナットの戻りを防止するというものです。
何度か使った事がありますが、これを嵌めておくと、手でナットを回しただけで、外せなくなるほど効果が高いものです。
緩み止め剤を使った、緩み止め方法は長くなりますので別ページで紹介しています。特徴や使い方や、使い分け、特徴を詳しく書いています。
詳しく見る!嫌気性ネジの緩み止め剤の種類・特徴・使い方
続きを見る
まとめ
ここでは、ホームセンターでも、比較的入手しやすい、緩み止め機能付きのナットを紹介してきました。
この他にも、各メーカーで、趣向を凝らした色んなナットがありますが、あんまり一般的には流通していません。あと、フランジナットの形状の、ナイロンナットみたいな、合わせ技もありますので、多種多様です。
はじめの方にも書きましたが、車やバイクのナットを交換する時は、基本的に同じものを交換する事を推奨します。
車やバイクのメーカーも、色んな試験を行って、そのナットの採用を決めたわけですから、同じものが1番の適材適所だと思います。
また、緩み止め機能の付いたナットには、寿命があるという事も、覚えておいてください。
ということで、今回の記事も、これで終わりです。
- 車に使用するネジはホームセンターで売ってない?。強度区分に注意。
- ユニファイネジって何?ハーレーのネジは普通の規格じゃない。
- ナンバープレートを固定しているネジのサイズ知ってる?
- 緩み止めの効果は、ほぼ無し! 座金・バネ座金は何のために使う?
- 緩み止めナットは再使用できる回数制限がある。緩み止めナットの選び方。
- ネジの緩み止め剤 嫌気性緩み止め剤の特徴・選び方・使い方
- ネジの十字穴を潰さない方法と潰れた時の対処方法
- 星形の穴のネジ トルクスネジってどんなネジ? 必要な工具と外し方
- 逆ネジ・左ネジって何? 左に回すと締まるネジは、どこに使う?
- ネジを締める時のトルクって何? チカラの単位とは?
\ 車とバイクを楽しむメディア /