欧州車に乗っている方なら、分かると思いますが、日本車と欧州車ってホイールの取り付け方が違うのです。
具体的には、日本車は、ナットで固定します。対して、欧州車(ジャガー・ランドローバーなどのイギリス車は除く)は、ボルトで固定します。
ちなみに、アメリカ車も、ナットで固定するのですが、この違いって何なのでしょうか?
今回の記事では、その理由とメリット・デメリットをまとめてみたいと思います。
欧州車がホイールをボルトで取り付ける理由
欧州の場合、ドイツの速度無制限の高速道路(アウトバーン)に代表されるように、走行速度域が高い場面が多く存在します。
欧州車のブレーキの初動が激しいのは、アウトバーンの速度域からフルブレーキを踏む可能性があるからだとも言われていますが、それほど、足回りに過大な負担がかかる場面があるのです。そのため、剛性を少しでも上げなければなりません。
ホイールを固定する場合も同様です。
例えば、ホイールをボルト締めで固定する場合、ハブ側にネジ山が立っていて、そこにボルトを締め付ける事になります。この場合、接続点は、ハブのネジ山とボルトのネジ山の1接続点となります。
これが、ナット締めの場合だと、ハブのメネジ部分にハブボルトを固定して、そのハブボルトにナットを固定するわけなので、2接続点となるわです。
組み立て物の剛性を上げるためには、接続点が少ない(パーツ点数が少ない)ほど有利となります。ナットで固定するよりもボルトで固定する方が、剛性が上がるのです。
これが、欧州車がホイールをボルトで固定する大きな理由となります。
また、ボルト固定には、パーツ点数が減るため軽量化になるというメリットもあります。バネ下重量が減ることは、運動性能(特に加速性能)に大きく影響します。ホイールを軽量化するのと同等の効果があります。
ホイールをボルトで固定するデメリット
ホイールをボルトで取り付ける場合の1番のデメリットは、ホイールの取り付けがしにくい事です。
ナット固定式であれば、ハブ側からボルトが出ているので、引っかけて作業ができますが、ボルト固定式の場合、ハブに引っかけてメネジ部を探す必要があります。
また、取り付け時に、ハブのメネジを壊してしまうと、ハブごと交換する必要があるため、交換費用が多くかかってしまうというリスクがあります。
ボルト側と比較して、メネジ側は破損のリスクは低いですが、それでも、ネジ山が合っていない状態で回してしまうと壊してしまうので注意が必要です。
ボルト固定式のホイールには、ハブリングが必要?
欧州車のホイールを純正品以外に交換する場合、ハブリングが必要になることがあります。
純正ホイールの場合、ハブ径にあったホイールが装着されていますが、社外品の場合、色んな車種に対応するためハブとの嵌めあい部分を大きく設定しています。
その隙間を埋めるのが、ハブリングです。
ハブに遊びがある状態で、ボルト固定だけだと、ホイールの穴とボルトの径に遊びがあるので、確実にセンターを出すことができず、ブレが発生したり、最悪の場合、ボルトの脱落につながります。
日本車がホイールをナットで取り付ける理由
ホイールをナットで固定する場合、ハブ側からボルトが出ているので、そこに、ホイールを引っかけてナット締めすれば簡単に取り付ける事ができます。
ボルト締めのように、片手でホイールをおさえながら、メネジ部を探す必要がないわけです。
日本車がナット固定式を採用したのは、欧州ほど高速域を多用する走り方はしないので、タイヤ交換時の利便性を優先したものと思われます。その後も、ナット固定式が通例となり、今に至っているのです。
また、取り付け時に、ボルトを壊してしまっても、ハブとは別パーツになっているので、ハブボルトだけ交換する事ができ、修理費用が安く済むというメリットもあります。
ただし、ハブボルトを交換するには、ブレーキローターを外す必要があるため、整備士資格が必要になります。
ホイールをナットで固定するデメリット
ナット固定式のデメリットを、あえて挙げるとすれば、ボルト固定式と比較して、剛性感が低くなることと、パーツ点数が多くなるので重量増となることくらいでしょうか。
あくまでボルト固定式と比較してという事なので、通常で使用している分には、デメリットは感じられないと思います。おそらく、極限までのスポーツ走行でもしない限り、普通の人には感じられないレベルです。
あと、細かなことまで言えば、ホイールを嵌める際に、ハブボルトのネジ山を傷付ける可能性があることや、ハブボルトを交換しなければボルト長さを変えられないので、ワイドトレッドスペーサーに不向きな事もデメリットとして挙げられます。
ナット固定式のホイールには、ハブリングは不要?
ナット固定式では、ハブリングは不要だとされていますがどうなのでしょうか?。
まず、純正ホイールの場合、ハブとホイールのセンターホールに過度な隙間がないため不要です。
ハブリングを必要とするのは、社外品のホイールを履いて、ハブに遊びがあり、センターに取り付かない場合です。
ただ、ナット固定式の場合、社外品のホイールには、ほとんどの場合、テーパーナットが使用されていて、テーパー部がホイールをセンターに引き寄せる作用があるので不要だとも言われています。
ボルト固定式の場合も、首下にテーパーがついたボルトを使用するので、同様の作用はしますが、ナット固定式のように、ハブ側から出ているボルトに引っ掛けて位置決めができないので、センターがでにくい構造になっています。
理屈上は、適切にテーパーナットで締め上げればセンターは出ると思いますが、個人的には、ハブリングとテーパーナットを併用して、確実にセンターを出す方が、取り付けガタによる振動・ナットの緩みなどのトラブル回避には有効かと思います。
日本車でもボルトで固定するメーカーもある
ナット固定式主流の日本車の中で、レクサスは、2020年6月に大規模マイナーチェンジを受けたISから、ボルト固定式に変更しています。
ボルト固定式に変更した理由について、レクサスISのプレスリリースに、以下のように書かれています。
「締結力の強化と質量の低減を図ることで、気持ちのいいハンドリングとブレーキングを実現」
「高剛性化とばね下の軽量化により、すっきりとした手応えのある操舵フィールと質感の高い乗り心地に貢献」
レクサスISのプレスリリース
その後の、NXでもボルト式が採用されていることから、今後、レクサスはボルト固定式に統一していくものと思われます。
まとめ
最後に、ボルト固定式とナット固定式のメリット・デメリットをまとめておきます。
ボルト固定式のメリット
- 取り付け剛性がアップする。
- パーツ点数が少ないので軽量化につながる。
ボルト固定式のデメリット
- ホイールの取り付けがしにくい。
- ハブボルトの交換ができる。
ナット固定式のメリット
- ホイールの取り付けがしやすい。
- ネジ山を潰してもハブボルトの交換ができる。
ナット固定式のデメリット
- ボルト固定式と比較して剛性が落ちる。
- ボルト固定式と比較して重量増になる。
どちらの取り付け方法にも一長一短があるようです。おそらく、それぞれのメーカーやお国柄による仕様の違いなので、その程度の事と考えればよいのではないでしょうか。
欧州車をナット固定式にするキットも販売されていますが、変換しても、あまり意味が無いように感じます。
最近では、レクサスもボルト固定式に移行しつつあるので、本体であるトヨタ車もボルト式に変わるかもしれません。そうなれば、No.1に追従する、メーカーも出てくることも考えられます。
もしかしたら、日本でもボルト固定が主流になる日が来るかもしれません。
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