高熱がかかる部分には、耐熱塗料を使用しなければならないのは分かっていますが、普通の塗料と耐熱塗料を使用する温度の境目って、何度なんでしょうか?
何度まで普通の塗料で大丈夫で、何度から、耐熱塗料を使わなければならないのですか?
これ、明確な答えって書いてないんです。疑問です。
そこで、当サイトで調べてみましたので、まとめていきます。
- 普通の塗料の耐熱温度が分かる。
- 耐熱塗料の最低使用温度が分かる。
- つまり、普通の塗料と耐熱塗料の使い分け温度が分かる。
普通の塗料の耐熱温度は?
普通のスプレーペイントの耐熱温度は、メーカーによっても違いますが、100℃位が限界です。
しかも、瞬間的にならOK程度で、常に100℃の温度を発生する場所に使用できるというわけではありません。
車の補修ペイントで有名な、ソフト99のボデーペンに使用される樹脂は、アクリル樹脂です。
塗料に使用されるものとは、厳密に言えば異なりますが、アクリル樹脂自体の常用耐熱温度は、60℃~85℃程度です。
塗料も同様に、高熱を加え続けると、段々と艶がなくなり劣化していきます。
さらに耐熱温度を超えて使用すると、溶けはじめ、最悪の場合、発火してしまいます。
つまり、普通のスプレーペイントの限界は、
常に温度がかかる場合は、80℃程度まで。
たまに高温になる場合は、100℃程度までとなります。
何度から耐熱塗料を使うべきなのか?
耐熱塗料を使用したことがあれば、分かると思いますが、大半の耐熱塗料は熱を加える事で、硬化して本来の性能を発揮します。
これを、焼き付けと言いますが、メーカーによって、焼き付け温度と時間に差があります。
一例として、こんな感じのバラツキ具合です。
焼き付け温度と時間
- ソフト99 耐熱ペイント→ 150℃/1時間
- ホルツ ハイヒートペイント→ 120~140℃/30~40分
- オキツモ ワンタッチスプレー→ 180℃/20~30分
- ワコーズ 耐熱塗料→ 150℃/1時間
- 呉工業 耐熱ペイントコート→ 200℃/1時間
どのメーカーの塗料でも、150℃近辺の熱を加えなければならない事が分かります。
その温度を、30分から1時間程度、維持する必要があります。
焼き付け塗装の炉でもあれば別ですが、一般家庭にあるわけもありません。
そこで、塗装した部分の発熱を利用する事になります。
耐熱塗料を使用する部分であれば、バイクのマフラーやヘッドなど、発熱する部分であるのは当然です。この熱を利用するのです。
その場合、焼き付け温度の指定が、150℃であれば、塗装する部分の温度も、150℃に達しなければならない事になります。
なので、耐熱塗料を塗装する部分の温度は、
最低でも、150℃以上。一般的には、180℃以上が理想となります。
大体の耐熱塗料が、600℃程度までの耐熱性がありますので、使用できる温度は、180℃くらいから、600℃の間という事になります。
ちなみに、焼き付けには、バーナーで炙る・ヒートガンで温めるなどのやり方もありますが、指定された時間以上に高温を保つ事は、困難です。
耐熱塗料を塗装する部分の、発熱を利用するのが現実的な手段となります。
普通の塗料と耐熱塗料の境界線は?
普通の塗料は、頑張って100℃まで。
耐熱塗料は、最低でも150℃という結論でした。
ただ、当サイトでは、経験上、安全値を見て、
- 普通の塗料は、80℃以下で使用する。
- 耐熱塗料は、安定的に180℃の焼き付け温度を確保できる部分で使用する。
という使用条件を推奨します。つまり、こんな感じになります。
ここで、気づきませんか?
80℃~180℃の間は、何を塗ればいいのでしょうか?
普通の塗料と耐熱塗料の境界線には、さらなる空白があるのです。
普通の塗料と耐熱塗料の空白を埋める塗料
耐熱塗料を使用する場所の例に、バイクのマフラーと書きましたが、マフラーには、そんなに高温にならない部分もあります。
もちろん車種・排気量・2ストか4ストか、空冷か水冷かにもよりますが、大体、こんなイメージかと思います。
この図で見ると、サイレンサー部分が90℃~180℃程度となります。想像よりも低くないですか?
マフラーを塗装するとなれば、1番目立つサイレンサー部分をキレイに塗りたいものです。
ただ、耐熱塗料を使用するとなれば、安定的に180℃の温度が必要になります。
焼き付け不要で使える耐熱塗料
焼き付けが必要となれば、180℃の温度が必要となるのは、書いた通りです。
そこで、焼き付け不要の耐熱塗料を調べました。ほとんどのメーカーの説明書きに、乾燥後に焼き付けが必要と書いてあります。
ただ、アサヒペンの耐熱塗料スプレーは、焼き付け無しで使用OKらしいとの噂があったので深堀りしてみました。
調査の結果、残念ながら、これは、ただの噂だったらしく、使用方法には、焼き入れの事は書いてありませんが、取り扱い上の注意の欄に、加熱しないと耐熱性等の塗膜機能は得られませんと、しっかり書いてあります。
指定の温度の記載はないので、低い温度でもOKかと思いますが、焼き不要という事ではないらしいです。
結論としては、焼き不要の耐熱塗料は、いまのところない(プロの工事用はあり)という結果に落ち着いてしまいました。
なので、基本は塗装部分の発熱を利用して、温度が足らない場合は、ヒートガンなどで外から熱を加えるというのが正解かと思われます。
600℃以上で使える耐熱塗料
マフラーの画像を、もう1度見てみてください。
低温の部分もありますが、高温過ぎる部分もある事が分かります。エキパイのエンジン側の部分は、700~800℃もあります。
大体の、耐熱塗料の、耐熱温度は600℃程度なので、これでは、塗膜性能は維持できません。
この場合、さらに高温に対応した耐熱塗料を使用する必要があります。
1番有名なのが、Rust-Oleum(ラストオリウム) 高耐熱ペイントだと思いますが、選択肢は多くはありません。
日本ブランドのものは、見当たらず、アメリカブランドしか見当たりませんでした。
Rust-Oleum(ラストオリウム) 高耐熱ペイント
- 【内容量】312g
- 【耐熱温度】1093℃
- 【材質・素材】 変性シリコーン・顔料・有機溶剤
VHT 耐熱 スプレー タイプ
- 【内容量】325ml
- 【 耐熱温度】820℃
- 完全硬化するまで、3時間程度かかる。
この2種類であれば、600℃以上の熱でも耐える耐熱性能があります。海外ブランドのため供給が不安定で、塗装方法(焼きの時間など)に多少、クセがありますが、一般のDIYでは、これを使用するしかないようです。
商品のリンクを貼っておきますが、在庫がない場合、取り扱い中止になっている場合もあります。
オススメは、楽天の武蔵ホルトが直営しているショップです。ラストオリウムの高耐熱ペイントは、武蔵ホルトが輸入しているようなので、在庫があることが多いです。
ということで、600℃以上の温度域では、耐熱塗料のなかでも、高耐熱塗料を使用します。
耐熱性能を左右する要因は?
塗料を構成する基本要素は、以下の4つが主なものです。
①合成樹脂
塗膜を形成するための成分。アクリル・エポキシ・ウレタン・シリコン・フッ素などがあります。
②顔料・染料
塗料の色を決めるもの。有機顔料・無機顔料があります。
③添加剤
塗料や塗膜の性能を 向上させるために加えるもの。可塑剤・乾燥剤・硬化剤・増粘剤などがあります。
③溶剤
樹脂や顔料を、液状に保持するための成分。キシレン・トルエン・エタノール・水などです。
という感じになります。
この中で、普通の塗料と耐熱塗料で大きく違うのが、①の合成樹脂の種類と、②の顔料になります。
普通の塗料と、耐熱塗料の成分を見比べてみます。
顔料の部分は、有機も無機も書いていませんが、
ホームセンターで、普通に売られている、ほとんどの塗料は、
アクリル樹脂+有機顔料・無機顔料
という組み合わせです。ホワイトなどは基本的に無機顔料だと思いますが、発色性を良くするため有機顔料も使用されています。
対して、耐熱塗料は、
シリコン樹脂+無機顔料
という組み合わせです。
シリコン樹脂は、熱に強く、耐候性にも優れています。また、有機顔料は、熱で分解が起こるので、熱による変性の少ない、無機顔料が使用されます。
ここが、大きな違いとなります。
一部の、普通のラッカースプレーにも、シリコン変性アクリル樹脂を使用しているものがありますが、これは耐候性の向上を狙ったもので、高温下では使用できないとの事でした。
まとめ
これで、全ての温度域での塗料の使い分けがまとまりました。こんな感じです。
少し釈然としない部分もありますが、そこはご容赦ください。
最近は、非接触温度計も安く売ってるようになりましたので、塗る前に、塗装部分の温度が何度になるのかを計測しておけば確実かと思います。
思った以上に、温度が低かったり、高かったりしますので。
今回は、バイクのマフラーの温度を例に挙げましたが、だいぶEV化も進んできて、エンジンから排出される熱なんて、話題にもならない時が来るのかなと、少し寂しく思います。
エンジンが現役のうちに、もっと楽しんでいきたいと思います。
というわけで、今回は、普通の塗料と耐熱塗料の使い分けという記事でした。
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