エンジンの性能指標として、トルクとならんで良く聞くワードである馬力。最高出力を表す指標です。
文字から推測するに、馬のチカラなのでパワーを表す言葉だという事は分かります。では、トルクは?って聞かれると、これもパワーを表す言葉だとしか説明できません。
んじゃ、この違いって何なの?
という事で、今回の記事では、分かってそうで分からない馬力に関して書いていきたいと思います。
馬力とは?
まず、前提として馬力といっても、イギリス発祥の英馬力と、それをもとにできた、仏馬力が存在します。英馬力は、HPで表され、仏馬力は、PSという記号で表記されます。
英馬力で使用される単位は、ヤードポンド法で、重量はポンド・距離はフィート。
これに対し、仏馬力は、馴染のあるメートル法が使用されています。
日本は、メートル法の国であるので、仏馬力が使用されています。ちなみに、英馬力を元に作られた、仏馬力ですが、英馬力=仏馬力ではありません。
メートル法に変更する際に、数値の整理をしたので、同じ1馬力で比較したときは、英馬力の方が出力は高くなります。
では、この前提をもとに、お話します。
実際に1馬力ってどの程度のチカラなのでしょうか?
1馬力は、そのまま1頭の馬の仕事量を表した数値です。といっても、馬もサラブレットもいれば、ポニーや、道産子もいます。なので仮定での話です。
仏馬力のもとになった、英馬力を考案したのはワットというエンジニアです。ワットは、エンジン・蒸気機関の出力を数値で表す方法として馬力を考えました。
その際に、元となったのが馬のチカラです。
1頭の馬は、33,000ポンド(約15t)の荷物を、1分間に1フィート(約30cm)動かせるという能力をもっていると仮定します。であれば、1秒間につき550ポンドの荷物を1フィート動かせるはずです。
これを仕事率と換算して、550 lbf·ft/s=1馬力と定めました。
550ポンド=249,476kgなので、1秒間につき、約249kgの重量を30cm動かす時のチカラとなります。
これを、仏馬力(PS)では、メートル法にして、
動かす距離を、1フィート(約30cm) ⇒ 1m に、
動かす重量を、550ポンド(約249㎏) ⇒ 75㎏ として、キレイな数字になるように整えました。
結果、仏馬力では、1秒間に75kgの重量を1m動かすときの仕事率(75 kgf·m/s)としました。
整理をすると、
英馬力では、1秒間につき、約249kgの重量を30cm動かせるチカラ
仏馬力では、1秒間に75kgの重量を1m動かすときのチカラとなります。
これを、英馬力と仏馬力の相互関係で表すと、1仏馬力=約0.986英馬力 となります。
馬力(PS)って使わなくなる表記なんです。
ここまでで、1馬力が、どの程度のチカラなのかは、おおまかに分かりました。
でも、ここから本末転倒な話しをします。
実は、この馬力(PS)という表記は、単位の国際的な統一により、本来廃止になっているものなんです。
エンジンの出力を表す時、PSという表記は、ワット(W)という表記に変更になっているのです。ただ、日本ではPS表記が定着しすぎているので、ワットとPSを併記する状態になっています。
馬力(PS)とワット(W)の関係式は、1馬力(PS)=735.5W となります。
TOYOTAスープラの最高出力
kW[PS] /r.p.m. 190[258]/5,000
メインの数字はWで、[ ]内の補足の数値がPSとなります。/の後は、回転数を表しています。
この数字は、カタログスペックをコピペしたものですが、今でも普通にPSが使用されています。
トルクと馬力の関係
トルクの考え方は、他の記事で詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。
参考トルクとは?分かってそうで分からない難解用語を簡単に。
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でっ、トルクと出力(馬力)の違いはというと、
トルクは、時間の概念無しに頑張った結果のパワー。スポーツでイメージすると重量上げ。
対して、出力(馬力)は、時間内にどれだけ頑張ってパワーを出せるかというもの。スポーツでいうと100m走とかのイメージかと思います。
エンジンであれば、瞬間的ではなく、継続的にパワーを出し続けなければならないので、スポーツとは違うかもしれませんが、イメージとしては、こんな感じかと思います。
では、トルクと出力の関係はというと、「出力=トルク×回転数」という式で表されます。
時間内に、重量上げ(トルク)を何回できるかという感じです。よく自転車のペダルに例えられますが、回転させるチカラがトルク、回転させるスピードが回転数、その結果、自転車が進むチカラが出力(馬力)となります。
一般的に、ディーゼルエンジンは、トルクが大きいといわれます。
ただ、最高回転数は高くはありません。ガソリンエンジンは、トルクは、さほど高くありませんが、上まで引っ張って回せます。
どちらのエンジンでも、同じ回転数であれば、ディーゼルの方が有利ですが、回転数の上げられる、ガソリンエンジンの方が、最高出力としてみた場合、大きい事が多いです。
まとめ
車のスペックには、必ず記載してある、最高出力と最大トルク。なんとなくは分かっていましたが、具体的に説明できなかったワードです。
いままで、あの車は300PSか、結構パワーあるな!とか、経験値の中で、乗った事のある車と比較した比較値であったかと思います。
その経験や感覚に、具体的に数値を知ったからと言って、何か変化があるわけではありませんが、多少の知識にはなったかと思います。
という事で、無駄な知識かもしれませんが、今回の記事もこれで終了です。
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