ミッチャクロンは、株式会社染めQテクノロジィさんが製造している、塗装用下地密着剤(プライマー)で、下地と上塗りをしっかりと結合して、塗膜を剥がれにくくするものです。
知名度と信頼性が高いので、DIYからプロ用途まで幅広く使用されています。
ミッチャクロンの凄いところは、普通だったら塗装のノリにくい下地材に対しても、塗装ができるという事です。そのうえ、基本的に、面倒な足付け作業も不要になります。
はじめて塗装をする人には、感覚的に感じないかもしれませんが、塗装って結構簡単に剥がれるものです。
なので、後々の塗装の剥がれや耐久性を気にするなら、使っておいて間違いないものだと思います。自分が塗装する時には、必ずと言っていいほど登場する愛用品です。
ということで、今回は、1番気軽に使用できるミッチャクロンマルチのスプレータイプに関して、特長・使用条件・使い方を中心に書いてみたいと思います。
ミッチャクロンの効果に疑問を持っている方は、こんな記事もあります。
効果は絶大です。見れば納得してもらえると思います。
ミッチャクロンの特長
ミッチャクロンの特長は、なんといっても、普通なら塗装できない素材や、塗装ができてもスグに剥がれてしまうような部分に、しっかりと塗膜が形成できるということ。
例えば、同じように見える金属でも、鉄よりもステンレス、ステンレスよりもアルミの方が塗装ノリが悪いです。
アルミに何もしないで塗装をすると、爪で引っ搔いただけで簡単に剥がれてしまいます。樹脂も基本的に、塗装ノリの悪い部類になります。
バイクのカウルや、車のバンパーを塗るのに、簡単に剥がれてしまったら嫌ですよね。
そんな時に登場するのが、ミッチャクロンです。ミッチャクロンが、ノリの悪い下地材と塗料の間に入る事で接着剤のような役割をするのです。
特長をまとめると、こんなにも有ります。
ミッチャクロンの特長まとめ
- 色々な下地素材に使用可能。
- 塗装前のペーパー研ぎが不要で、作業工程の短縮が可能。
- スプレータイプで気軽に使える。
- 乾燥が早く、上塗りが20分程度でできる。
- 上塗り塗装も色々な種類が使える。
- 黄変無し(上塗りにクリヤー塗装可)
下の方で書きますが、黄変しないって、結構すごい事なんです。これ便利ですよ。
ミッチャクロンの性能
優れもののミッチャクロンですが、全ての環境下で、使用できるわけではありません。
適正に使用するために、使用できる下地材・使用できる上塗り塗料・塗膜の性能の順に細かく見ていきたいと思います。
ミッチャクロンが使用できる下地材
ミッチャクロンが使用できるのは、下記のような下地材です。密着性○のものでも、経験上、問題なく密着すると思います。
塗装面(下地材) | 密着性 | 備考・注意点 |
---|---|---|
アルミニウム(AL50P) | ◎ | アルミ合金は注意 |
アルマイト加工品 | ○ | |
ステンレス(SUS304・403) | ◎ | 鏡面研磨品を除く |
ガルバリウム | ◎ | |
銅 | ◎ | |
スチール | ◎ | |
カラートタン | ○ | 表面の塗料により異なる |
焼付塗装塗膜 | ◎ | 表面の塗料により異なる |
電着塗装塗膜 | ◎ | |
フッ素加工品 | ○ | 表面のフッ素加工の除去が必要 |
化成皮膜処理物・ボンデ鋼板 | ○ | ラッカー塗料の厚塗りは厳禁 |
電気亜鉛メッキ | ○ | メッキの種類により異なる |
溶融亜鉛メッキ | ○ | メッキの酸化被膜形成後に塗装可 |
鉛・真鍮・クロムメッキ | ○ | |
コンクリート・モルタル | ○ | |
ポリプロピレン(PP) | ○ | |
ポリカーボネイト | ○ | |
硬質塩ビ | ○ | |
ABS樹脂 | ○ | 素材の硬度による溶剤の影響に注意 |
FRP | ○ | |
ポリ化粧版 | ○ | |
アクリル板 | ○ | |
メラミン化粧板 | ○ | |
ガラス・ホーロー | ○ | ホーローは、メーカーに要問合せ |
磁器タイル (釉薬処理のものを除く) | ○ |
注意が必要な場面もあるので、気になる場合は、メーカーに問い合わせてからの使用をオススメします。
ミッチャクロンの上に使用できる塗料
ミッチャクロンを塗布した上に使用できる塗料は、下記の通りとなります。
車の補修塗料スプレーは、アクリルラッカー塗料に該当すると思います。2液性のウレタンクリアは、2液反応硬化型ウレタン塗料にあたると思います。
上塗り塗料の種類 | 適合性 |
---|---|
1液反応硬化型ウレタン塗料(弱・強溶剤) | ○ |
2液反応硬化型ウレタン塗料(弱・強溶剤) | ◎ |
2液反応硬化型アクリルウレタン塗料(弱・強溶剤) | ◎ |
1液型エポキシ塗料 | ○ |
2液反応硬化型エポキシ塗料 | ○ |
アクリルラッカー塗料 | ○ |
反応硬化型水性塗料 | ○ |
アクリルエマルジョン | △ |
メラミン焼付け塗料(150℃程度) | ○ |
UV塗料 | △ |
合成ペンキ フタル酸エナメル塗料 | △ |
2液反応硬化型フッ素塗料(弱・強溶剤) | ○ |
ミッチャクロンの上には、色んな塗料が塗れますが、塗装の上に、塗装をする時は、塗料の相性があるので、注意してください。詳しくは、こちらをご覧ください。
ミッチャクロンの塗膜性能
下の表は、メーカーさんが性能試験を行った結果です。一定の条件下での試験なので、参考程度にしかなりませんが、目安にはなります。
試験は、電気亜鉛メッキ鋼板に、ミッチャクロンマルチをスプレーガンで塗布、アクリルウレタン塗料を上塗りして7日間乾燥させたものを試料として行ったとの事です。
試験項目 | 試験内容 | 結果 |
---|---|---|
付着性 | 1mm×1mm のゴバン目セロテープテスト | 100/100 |
促進対候性 | ウェザーメーター 2,000 時間 | 異常なし |
屋外暴露 | 5 年間 二次密着 100/100 | 異常なし |
耐衝撃性 | Dupon 式 1/2inch 500g 50cm | 合格 |
耐屈曲性 | 3mmφ 180°折り曲げ | 合格 |
耐水性 | 20℃ 水道水 240 時間浸漬 | 異常なし |
耐塩水性 | 35℃ 5%塩化ナトリウム 400 時間噴霧 | 異常なし |
耐アルカリ性 | 20℃ 2%水酸化カルシウム 48 時間浸漬 | 異常なし |
試験結果の中で気になるのは、付着性と対候性だと思います。
付着性のゴバン(碁盤)目セロテープテストは、定番の密着性試験です。
塗装したものに1㎜×1㎜の正方形で傷をつけて、そこにセロハンテープを貼ります。チカラを加えて良く貼り付けたら、セロテープを強く引き剝がします。これで、問題がないか確認するものです。
性能試験の結果、100/100なので、100個の1㎜×1㎜のマスを作って試験した結果、問題なしという事になります。なので性能的には全く問題なしで優秀という事ですね。
次に対候性。屋外暴露とは、屋外に放置しておいて5年間の経過を観察した結果です。
さらに2次密着とありますので、5年間経過したあと、碁盤目セロテープ試験を行ったものと思います。これも優秀な結果です。
そのほかに、ウェザーメーター 2,000 時間というのがあります。
これは、促進耐候性試験の事です。屋外暴露試験を行うと、結果が出るまでに時間がかかるので、人工的に厳しい環境を作り、そこで耐候性の試験を行います。
実際の環境下よりも、試験体の劣化が促進され、早期に耐候性試験の結果を得る事ができます。この結果をもとに、実際の環境下での耐候性を推測する事ができます。
塗装業界だと、250時間~500時間程度が1年の屋外暴露として考えられていますので、常に日の当たるような場所で4年程度、普通の環境下で8年程度は問題ないとの予測ができます。
ウェザーメーター 2,000 時間で異常なしなので、それ以上の性能を持っていることになります。
この性能試験の結果なら、安心して使用できますね。
ミッチャクロンの使い方
ここからの使い方は、個人的な考えによる作業工程も含まれます。少し、公式の使い方と違う箇所もありますが、今まで使ってきた中で最良の方法だと思います。参考程度に見てくれると嬉しいです。
今回は、手元にあった、ソフト99のスプレーペイントのキャップを塗ってみます。
柔らかめの樹脂だし、絶妙な艶感とか、いかにも塗装がノリにくそうで、サンプルには丁度いいかなと思います。
では、やってみます。
下地作り
足付け作業が不要というのもミッチャクロンの魅力なのですが、バイクのカウルなどの樹脂の場合、ミッチャクロンを塗布しても密着性が◎ではなく、○のものがあります。この場合、自分は足付け作業を行います。
足付け作業とは、塗装面をサンドペーパーで荒らしておく作業です。これにより、下地材の表面積が広くなり、ミッチャクロンが食い付きやすくなります。
イメージはこんな感じです。荒らして傷がある方が、表面積が広くなっているのが分かりますね。
足付けのやり方は、簡単です。耐水のサンドペーパーを使用して、下地材を濡らしながら、やさしく研磨していくだけです。表面がツルツルなものであれば、全面的に艶がなくなるまで磨けばOKです。
写真では分かりにくいかもしれませんが、研磨後は艶消しの状態になっています。これでOKです。
ミッチャクロンが下地材にしっかりと食い付けば、上塗りする塗料は、ミッチャクロンが、しっかりと保持してくれます。いかに下地材にミッチャクロンを定着させるかがポイントとなります。
なので、密着性が◎のものであっても、足付けの面倒くさそうな形状でなければ、安心のために軽く作業をしておいたほうが良いかもしれません。
ただ、溶融亜鉛メッキ、電気亜鉛メッキ素材に塗布する際、被塗面の研磨はしないように注意してください。密着しなくなります。
足付け作業の事を、もう少し詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
脱脂
どんな塗装でもそうですが、下地材に油分や汚れ、サビなどが残っていると、うまく塗ることができません。油分除去剤を使用して、しっかりと取り除きます。
脱脂作業を怠ると、こんな感じになりますのでご注意ください。
ミッチャクロンの製造元である、染めQテクノロジィさんからも、脱脂用のクリーナーが販売されていますが、自分は、定番のシリコンオフを使ってます。
ミッチャクロンの吹き付け
ミッチャクロンは、2度塗りを行います。
1度目・2度目ともに、極薄く塗布します。まんべんなく、表面に振りかける程度のイメージで良いです。
1度目と2度目の間隔は、春・秋くらいの温度で10~15分程度で良いかと思います。
普通のスプレー塗装よりも、かなりうすい感じで仕上げます。薬剤は、透明なので塗った部分と塗っていない部分も見分けが付きにくいので注意して吹き付けてください。
ミッチャクロンを塗ると、艶がでます。足付けしてあれば、艶消しになっているので多少の見分けはつきます。
塗膜が厚くなると、逆に密着が悪くなるので、特に窪んだ部分に液が溜まらないようにしてください。
上塗り
2度目のミッチャクロン塗布後、20分程度で上塗りができます。ミッチャクロン塗布後、時間がたちすぎると密着性が悪くなるように思います。
上塗り塗装ができました。弾きもなくキレイに塗れました。艶感も良好です。ミッチャクロンの性能は、塗装後少したってから完全に発揮されるので、塗装後は、しばらく、そっとしておきます。
※.上塗り塗料が水性系の場合は、2時間程度の乾燥後に上塗りします。
上塗りは、それぞれの上塗り塗料の注意書きを読んで、それに従います。
【応用編】下地の素地を生かしてクリア塗装
ミッチャクロンは、素地を保護するためにクリアだけ塗装する場合にも使用できます。
普通のプライマーだと、紫外線などでプライマー自体が黄変して黄色っぽく濁ってきてしまいますが、ミッチャクロンは黄変を起こしにくいので、クリア吹きの下地にも使用できるのです。
銅像の表面コートなどにも使用されているとの記事も読みましたので効果は実証済みかと。
これ、すごく便利な機能で、
たとえば、カーボンパーツの劣化を防止するためのクリア塗装とか、アルミ材が白っぽくなってしまうのを防止するとか、使い方は様々です。
自分の場合は、カーボンパーツが好きなので、そのクリア塗装の状況を書いた記事もあります。
まとめ
と、色々書いてきましたが、とにかく便利です、ミッチャクロン。
自分の場合は、家と会社に常に在庫してるくらい必需品です。塗装の下地にミッチャクロンを吹いておかないと、剥がれるんじゃないかって不安で仕方なくなるくらいです。
ミッチャクロンの塗布は、本当に薄っすらなので、1本でかなりもちますし、一家に一本持っていても良いのではないかと思います。
という事で、今回は、塗装の必需品【ミッチャクロン】の記事でした。
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